2019年 03月 27日
駆除された野生動物と動物園の動物たちについて考えるシンポジウム
こんにちは!
ライオン班の伴です。
今回は3月13日に当園で開催されたシンポジウム
「駆除された野生獣を動物園の動物福祉に役立てる
~地域における獣害問題と動物園動物の動物福祉問題を
つなぐ新たな実践活動~」についてのお話です。
シンポジウムのポスター
九州大学持続可能な社会のための決断科学センター主催、
Wild meǽt Zoo(ワイルドミートズー)、九州大学大学院地球社会統合科学府、
大牟田市動物園の共催で実施されました。
シンポジウムの背景を簡単に説明すると…
シカやイノシシなどによる農業被害や生態系被害などの被害拡大を防ぐため、
全国各地でシカやイノシシなどの駆除が行われていますが、
駆除された動物の多くは、様々な事情により廃棄されています。
一方、動物園で飼育されているライオンの多くは、野生とは大きく異なる餌を
食べており、刺激が少なくなるなどの問題を抱えています。
こうした状況を鑑み、駆除された動物を動物園のライオンに与えることによる
双方の課題解決が模索されています。
今回のシンポジウムは、獣害問題や動物園に関わる多様な関係者が講演を行い、
参加者と議論を深めることを目的に開催されました。
当園ではこれまでにも本シンポジウムに関連した試みを実施しています。
それぞれの試みをご紹介した記事は、こちらからご覧いただけます。
さて、シンポジウム当日。
平日開催ということもあり、人が集まるのか心配していましたが・・・
予想を遥かに超える超満員!
全国から約90名の方々が参加され、参加者のご所属も鳥獣対策の関係者や
動物園関係者、動物園ファン、地元の市民の方々と非常に多彩でした。
参加者だけでなく講演者も多彩です。
九州大学持続可能な社会のための決断科学センター/Wild meǽt Zooの
細谷先生による趣旨説明や衛生対策のお話。
当園広報担当冨澤による当園の動物福祉に対する取り組みの紹介。
糸島ジビエ研究所/Wild meǽt Zooの西村さんによる
ジビエ(野生鳥獣由来の食肉)事業者から見た
動物園連携事業の意義についてのお話。
九州大学持続可能な社会のための決断科学センターの御田先生による
アンケート調査のお話。
科学コミュニケーター/Wild meǽt Zooの大渕さんによる
屠体給餌を行うことについての問いかけ。
台北動物園保育教育基金会の張さん
(なんと台湾からお越しいただきました!)による
台湾の動物園での教育活動の紹介。
私も屠体給餌がライオンたちに与える影響について紹介しました。
総合討論では各演者が意見や感想を述べ、会場から質疑を受けました。
進行からの問いかけに答える細谷先生。
私は、会場からどんな質問が飛び出すのか、
内心ドキドキしながら身構えていました。
すると、大牟田市内在住の70代男性の方から
以下のようなコメントを頂きました。
「動物園は必要なのかそうではないのかと問われると、
私は必要だと思う。特に大牟田市のような小規模の街で、
動物園を維持して来れたというのは、市民の誇りだと思っている。
これからも市の誇りとして維持していきたい。」
コメントの後には会場から自然と温かい拍手が沸き起こり、
当園スタッフをはじめ、目頭を熱くされる方も見られました。
総合討論の後には実際に屠体給餌を行い、皆さんと一緒に観察しました。
ヤクシカの屠体を食べるアムールヒョウのポン。
初めての屠体給餌でしたが、翌日には骨まで食べきっていました。
Youtubeに動画もアップしております。
初めてヤクシカを目にしたとは思えない
ポンちゃんの食べっぷりを是非ご覧くださいませ。
最後に、閉会のあいさつで九州大学大学院比較社会文化研究院の
荒谷先生のコメントを紹介します(記憶に基づくため表現が多少異なります)。
「恐らく、この課題に答えは出ないと思います。
ですが、このように皆さんと一緒に悩み考えることこそ
意味があるのです。」
今回のシンポジウムに限らず、生きものの命に関わることは
様々な見方ができます。
多角的な情報や多様な考えに触れ、一人一人が悩み考え、共有する。
これからもそんな場を提供し、市民が誇れる動物園を創っていきたいです。
講演者の皆様や開催にご尽力いただいた皆さま、
そして参加されたすべての方々に心よりお礼申し上げます。
※本シンポジウムは国立研究開発法人科学技術振興機構、
フューチャーアース「環境・災害・健康・統治・人間科学の連携による
問題解決型研究」、平成30年度九州大学QRプログラム
「特定領域強化プロジェクト」の支援を受けて開催されました。
ライオン班 ばん
by omutazoo
| 2019-03-27 14:06
| 取り組み