2020年 10月 18日
ポンちゃんの健康診断
みなさん、こんにちは。
アムールヒョウ担当のこがです。
今回はアムールヒョウの健康診断についてのお話です。
健康診断といえば、体重を測ったり採血したり…みなさんも一度は
病院や学校などでされたことがあるかと思います。
動物園ではどんなことをどんなふうに行うのでしょうか?
当園では、ハズバンダリートレーニング(動物の心身の健康管理など
飼育上必要な行動を動物たちに協力してもらいながら行うトレーニング)を
積極的に行っており、このトレーニングによって、定期的に採血や体重測定、
尿検査などの健康管理をしています。
しかし、血液や尿の検査結果や体重の変化等、日頃の観察だけでは
把握できることは限られています。
そこで麻酔をかけて、普段できない検査を行い、
より詳しく健康状態を調べることも必要です。

アムールヒョウのポンは、今年で12歳。
平均寿命が15歳といわれているアムールヒョウでは
高齢です。
これまでは肉食動物に麻酔をかける際、麻酔銃や
吹き矢を用いていました。
この方法は一般的ですが、動物の心身へのリスクがあります。
より安全に健康診断を行うために、今回は従来とは異なる麻酔方法を
用いることにしました。
それは、これまでの採血のハズバンダリートレーニングを応用して、
尾の静脈に麻酔薬を注入する方法です。
採血部位の少し上をぎゅっと握ることにより駆血をし、
針を刺して麻酔薬を静脈に注入、その後止血をします。
また、これまで採血は展示場にある台の上で行っていましたが、
台から転落したり、展示場内のさまざまな障害物に身体をぶつけるなどの
事故が想定されるため、展示場に比べ狭く、事故の可能性も低いと思われる
寝室にて実施することにしました。




本番の麻酔薬注入に向けて、指や先を潰した針でしっぽを刺激したり、
麻酔薬の替わりに生理食塩水を注入するなどの練習を行いました。
さて、前置きが長くなりましたが、ここからは当日のお話です!
当日は、獣医師・飼育員、みんな朝からドキドキしていました。
予定通りの時刻に始めようとしましたが、こちらの様子が
いつもと違うのを察したのか、最初ポンはなかなか柵の方に寄って来ず、
寄ってきてからも、柵の外に出した尾を中に引き込んでしまうこともありました。




身体全体を触って、腫瘍や傷などがないかをチェックしました。


虫歯や歯石などなくキレイでした。舌の状態も確認できました。


超音波を腹部に当て、臓器の状態を確認しました。
肝臓や心臓などすべて正常でした。

不純物が入っていないきれいな尿を採取し、検査しました。
この他に、胸部と腹部のレントゲン検査も行いました。
今回の健康診断では、身体の異常は特にありませんでした。
寝室でのトレーニングは、麻酔をかけること以外にも
採血や投薬などにも生かすことができます。
野生では寒いところでくらしているアムールヒョウに、
夏の暑い日に展示場でのトレーニングに協力してもらうことは、疲労に繋がるかも
しれません。
そんな時は、今回のトレーニングを生かして、空調設備のある
寝室内の涼しい環境で無理なく採血や投薬などをしていけたら
と思います。
と、ここまれ健康診断のお話をつらつらと書いて参りましたが、
実は私、9月下旬に大型肉食動物担当になったばかりでして、
今回の健康診断のためのトレーニングや打ち合わせにも、途中から
参加をしておりました。
そんな新米担当者の私にとって、この健康診断はとても貴重な経験であり、
今後の飼育に活かせることをたくさん学びました。
ポンちゃん、協力してくれてありがとう!!
アムールヒョウ担当:こが