2021年 09月 11日
「動物福祉チェックシート」と「動物福祉チェックリスト」
みなさん、こんにちは。
最近メガネ男子を卒業した、かわのです。
今回は、昨年の8月から開始している「動物福祉チェックシート」と「動物福祉チェックリスト」をご紹介したいと思います。
すこーし難しいお話になるかもしれませんが、とても大事なことなので是非最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
動物園でくらす動物たちが豊かな生活を送るためには、その動物の生理的、環境的、栄養的、行動的、社会的な欲求が満たされる必要があります。
そのため、私たち飼育員は、その動物にとって今の環境の中で何が不足しているのか、何が必要なのかを考え、様々な取り組みを行っています。
そして、そういった取り組みは私たち飼育員の自己満足にならないように、本当にその動物のためになっているのかを評価する必要があります。
たとえば・・・
キリンは舌を器用に使って木の葉を食べ、食事に多くの時間をかける動物です。
そのため、本来の食べ方である「舌を使った食べ方」を引き出し、食事にかける時間を増やすことを目的として作製した容器(フィーダー)を使って、ペレット(固形飼料)をあげています。
このフィーダーを使ってペレットをあげることで本当に食事にかける時間が増えているのか、またどのフィーダーが効果的なのかを調べました。
(一番左の普通のコンテナと4種類のフィーダーで、それぞれ同じ量のペレットを入れてあげたときに食べ始めてから完食するまでにかかる時間を比較したグラフ)
コンテナと差が無いフィーダーもありました・・・
次に、レッサーパンダは一日の約半分の時間を休息に使い、残りの半分の時間を食べ物を探して食べるなどの活動的な行動に使って生活をしています。
この野生での活動量に近づけるため、自動給餌機(設定した時間に中から食べ物が出てくる機械)を使用し、複数回に分けて、ランダムな時間にペレットをあげています。
この自動給餌機を使ってペレットをあげることで本当に「探す」という行動が増え、活動量の増加に繋がるのかを調べました。
(自動給餌機の導入前と導入後で1日の平均活動率を比較したグラフ)
自動給餌器を導入しても活動率は大きく増加しませんでした・・・
このように個々の取り組みに関しては、行動を観察、分析し、その取り組みが本当にその動物にとって良いものなのか、効果があるのかを、これまでも評価していました。
しかし、その動物がくらす環境全体を様々な視点から見て、本当に豊かなくらしが送れているのかを評価することはできていませんでした。
そこで、様々な資料を参考にしながら当園の飼育員全員で話し合い、このような「動物福祉チェックシート」を作成しました。
この「動物福祉チェックシート」は、栄養、環境、健康、行動、精神的な状態の5つの分野で各5項目ずつ用意し、様々な視点からみて、その動物が豊かなくらしができているのかを評価するものです。
当園では昨年の8月から2ヶ月に1回、このシートを用いて班ごとに話し合い、動物種ごとのくらしを評価して、「動物福祉チェックリスト」にまとめています。
そして、当園でくらす全ての動物を対象に、どの動物に何が不足しているのかを改めて確認し、改善していくことで、動物たちが豊かなくらしができるように生活の質を向上させています。
この1年間でわずかに向上はしてきましたが、今後も引き続き当園でくらす全ての動物がより良いくらしができるよう、職員全員で取り組んでいきます。
かわの
by omutazoo
| 2021-09-11 11:49
| 取り組み