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こんにちは。
日中はまだポカポカ陽気ですが、朝晩は冷え込んできましたね。
動物たちもヒーターや暖房をつけたりして寒さ対策を行っています。
みなさまも寒暖差に気を付けてお過ごしください。

さて、当園では平日に動物のハズバンダリートレーニングガイドを行っており、ライオンやキリンなどの採血トレーニングの様子をお客様にご覧いただいています。
またガイドとは別で、展示場で採血を行う動物、アザラシやアムールヒョウなどのトレーニングの様子を見かけたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
ホンドギツネのわらびの採血が出来るようになりました!_c0290504_14260177.jpg
しかし、寝室で行っている場合や動物がお客様を気にするような反応が見られる場合などは、トレーニングの様子をご覧いただいていません。

実は、ホンドギツネのわらびは約2年前から採血トレーニングを行っていました。
わらびはお客様のいる時間帯だと姿や声に反応していたため、閉園後の誰もいない時間帯に行っていました。

採血トレーニングを始めたのは、現在育児休暇中の先輩飼育員の おのさんです。
小野さんが採血トレーニングを始めたのは、2020年6月3日からで、それまでは網で捕獲をして採血を行っていました。
わらびは一時期、肝臓の数値が悪く、お薬を投与していた期間があり、定期的な採血で数値を知ることが必要でした。
採血をする度に毎回捕獲するとなると、動物の負担が大きいため、トレーニングでの採血を試みました。

わらびの採血トレーニングは、展示場の柵づけした台に、右前肢を差し出してもらって行いました。
ホンドギツネのわらびの採血が出来るようになりました!_c0290504_14260712.jpg
最初は、柵から前肢を出すことから始まり、徐々に前肢を出す時間を延ばします。
トレーニングを開始してから5か月経って、ようやく前肢を触れるようになりました。
そして、それまでは飼育員一人で行っていましたが、獣医師も加わり、二人でいることに慣れてもらいました。
獣医師は採血トレーニングをしている様子を離れた位置から見ることから始め、徐々に距離を縮めていき、前肢を触れるようになるまでに約3か月かかりました。
その他にも、針を刺す部分に、バリカンでの毛刈り、消毒、針に近い刺激をしたりと、時間を費やしてきました。
2021年9月6日に初めて採血の為に針を刺しましたが、血管に当たらず、血液は採れませんでした。

ここまで おのさんが出来るようにしてくれた状態で、おのさんの代打として今年の3月から私(のだ)が採血トレーニングを引き継ぎました。
引き継いだ後すぐ、ホンドギツネの展示場改造を行ったため、採血トレーニングを中止した期間が3か月ほどありました。
展示場改造後、採血台の位置や高さを変更して久しぶりに行いましたが、わらびは何の躊躇もなく、前肢を差し出してくれました。
スムーズに進めることが出来たのは、トレーニングを積み重ねてくれたわらびと おのさんのおかげです。
ホンドギツネのわらびの採血が出来るようになりました!_c0290504_14261191.jpg
そして、トレーニングを続け、7月22日にホンドギツネのわらびの採血に初めて成功しました。
わらびは、針を刺しても落ち着いており、スムーズに0.5mlの血液を採取することが出来ました。
血液検査結果も、異常が見られず、安心しました。
その後も採血を試みましたが、わらびが前肢を引いてしまったり、血管に当たらないことが続き、2回目の採血に成功するまでに約2か月ほど空いてしまいました。
しかし、2回目は初めての時と比べ、倍以上となる1.2mlの血液を採取することが出来ました。

採取する量が多ければ、より詳しく検査することが可能となります。
2回目の血液検査結果も、異常はありませんでした。

今後は、1か月ごとの定期的な採血が行っていけるようにトレーニングを続けていきたいと思います。
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担当:のだ


# by omutazoo | 2022-11-09 14:58 | 動物
みなさん、こんにちは。獣医師のにしむらです。

前回は血液検査のお話をしたので、今回も検査シリーズということで、超音波検査についてお話ししようと思います。

超音波検査はその名の通り、超音波(=人には聞こえない高周波の音)を用いて、お腹の中の臓器を調べる検査です。
お腹にあてる部分をプローブと呼びます。ここから超音波が出ます。用途に合わせた色々な形のプローブがあります。
獣医のお仕事~超音波検査~_c0290504_16310549.jpg
プローブを体にあてて超音波を発すると、体内の臓器に当たった反射波が、プローブに戻ってきます。この反射波が解析され、体の中を映した画像として画面に表示されるのです。

獣医のお仕事~超音波検査~_c0290504_16313902.jpg
これは、イルカのエコーロケーションや漁船の魚群探知機と同じ原理です。
超音波を発し、対象物に当たって戻ってきた超音波をキャッチすることで、色々なものを「見て」いるのです。
当園において超音波検査機器の出番が一番多いのは、モルモットの健康診断や診察です。

鮮明な画像を見るためには、プローブが皮膚に密着している必要があるため、毛刈りをした上で、アルコールやエコーゼリーで濡らしてから、プローブを当てます。
獣医のお仕事~超音波検査~_c0290504_16214120.jpg
基本的に、尿や血液などの液体は黒色、臓器は様々な段階の灰色、結石などは白色に映ります。
このモルモットは、外陰部からの出血を繰り返していたため、膀胱もしくは子宮卵巣の病気を疑って検査を実施しました。
この個体の場合は、子宮に腫瘍がはっきりと映っていました(中央の部分が全て腫瘍です)。
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画像はプリントして保存しておくことも可能です。ちなみにこれは腎臓の写真です。腎臓の構造が良く分かります。
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超音波検査は、体内の臓器の様子を調べる際に実施しますが、どのようにプローブを当てるか、映っている画像をどのように判断するかといった点で、検査者の技量に大きく左右される検査でもあります。

これから更に画像診断を学び、動物たちの健康管理に役立てていきたいと思います。


獣医師 にしむら

# by omutazoo | 2022-11-06 15:25 | スタッフの日常

大牟田市動物園のスタッフが、日々のさまざまなことをお伝えします!


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